セミナー概要 |
ご講演者 |
外務省 | 気候変動枠組条約室長 | 岡庭 健様 | |||
経済産業省 | 地球環境対策室長 | 関 総一郎様 | |||
環境省 | 国際対策推進室長 | 牧谷 邦昭様 |
経済産業省 | 大臣官房参事官(環境担当) | 関 成孝様 |
IGES上席客員研究員/GISPRI客員研究員 | 松尾 直樹(Climate Experts代表) |
記のご報告者および | |||||
林野庁 | 海外林業協力室課長補佐 | 佐藤 英章様 |
各ご講演者のご発表要旨 |
COP8では、京都メカニズムに関して合意されていなかった事項のなかで、排出量などの報告・審査のガイドライン採択やCOP9での最終決定に向けたCDM吸収源活動のスケジュール決定などの進展があった他、途上国を支援する仕組みの実施、2013年以降の交渉プロセスに関する議論が行われた。 「デリー宣言」については、次期約束期間の話をしたい先進国とCOP7まで十分議論できなかった途上国支援事項の議論を進めたい途上国という位置付け。鈴木環境大臣は閣僚会合における第一回ラウンドテーブルにおいてキーノートスピーカーの1人として、京都議定書の早期発効地球規模の参加条約の究極目標達成のために2013年以降のプロセスの開始を主張した。また「デリー宣言」採択の過程で日本として将来の行動強化の為の検討開始途上国を含む各国の緩和措置(排出削減)についてCOPで検討を実施、などを主張した。一方、途上国は、先進国の排出削減義務の履行途上国への新たなコミットメントの拒否途上国支援などの合意事項の履行を訴えるとともに、議長国インドのバジパイ首相は途上国と先進国の一人あたり排出量の相違を挙げ「途上国にコミットメントを課すのは見当違い」と発言した。 交渉の過程で宣言を採択できない可能性もあったが、国際的に気候変動を議論するCOPで宣言を出せたこと自体は評価できる。「デリー宣言」の文言の多くは気候変動枠組条約やヨハネスブルグサミットの書き写しに過ぎないが、前文に「全締約国の緩和活動に注目」及びパラ(f)の「緩和及び適応に関する非公式協議開始」といった排出削減に関する日本の主張を盛り込むことができた。CDMなどの排出削減活動を真剣に考えている途上国は決して少なくなく、これを正当に評価することが将来の話につながっていくという意味で小さな一歩であると評価する。 京都議定書の批准状況は、11月14日現在98ヶ国締結、その内先進国(Annex I国)が26ヶ国でその1990年のCO2排出量は先進国全体の37.4%※。COP期間中の批准はなかったが、COP8後に韓国が批准。尚、ニュージーランドは国内で批准の手続きが進行中で2~3週間以内に批准の見通し。ロシアは10月の川口外相と副大統領の会談で来年の春会期に批准の検討を行うと言及。またカナダは国内実施計画を議会で検討中であるが、カナダ憲法では京都議定書批准において議会承認は必ずしも必要ではなく「政治的な動き」であると認識している。 現在の「どういう方向に交渉を持っていくか」という状況下で、日本政府としてはすべての国が参加する仕組み作りに向けて引き続き努力していきたい。 ※ 京都議定書発効の条件は「55%以上」 |
気候変動枠組条約締約国会議第8回会合(COP8)「概要と評価」(日本政府代表団) 「デリー閣僚宣言」(日本政府仮訳 ・ 原文-PDF 347K) |
京都メカニズムの柔軟性や取引の安定性確保という点で注目している「京都メカニズム資格回復の迅速な手続き」のガイドラインに関する議論が行われた。COP8まで日本-12週間以内、EU-20週間以内の手続き完了を主張したが、結局「17週間以内」で決着した。また、排出枠やクレジットを管理する「登録簿」を各国が準備する際の技術基準の議論においては、基本的な「general
design requirement」が合意されたものの、データフォーマットやプロトコルといった事項は今後引き続き議論される。日本政府はすでに登録簿開発事業者を指定し専門家をCOP8直前のワークショップに派遣した。すでに開発を行っている英国を除いて各国の登録簿に関する技術的な蓄積は高くないため、英国あるいは日本のプロトコル等が採用される可能性もある。 米国への天然ガスなどの「クリーナーエネルギー」輸出分をクレジットとして発行し京都議定書目標達成に使用したいという「カナダ提案」についての議論は、カナダが第一約束期間に使用するというよりも「将来に向けてクリーンエネルギーの貿易に果たす役割を研究したい」とその主張を和らげたが、合意を得ることができず先送りになった。 「過去の累積排出量の温暖化への寄与度に基づく削減割当の研究」という「ブラジル提案」の取扱いについては、今までの作業プランが一区切りついたので、今後も本研究を継続するかという議論があった。先進国は慎重な態度を取ったが、途上国の寄与度も含んで「科学的に」研究を継続していくことで合意された。日本としては「将来における寄与度」も研究対象とすべきと主張した。2013年以降の削減目標の交渉でブラジルが提案してくる可能性もあり注目していきたい。 政策措置(Policies and Measures)の議論においては、代替フロン(HFCs/PFCs)の削減取り組みおいてIPCCとモントリオール議定書の科学的助言機関(TEAP)による共同報告書作成が合意されたが、サウジアラビアからの「産油国への経済的悪影響に関する議論」については合意できずに先送りとなった。 |
議定書7条8条ガイドラインにおいては、AAU/RMU/ERU/CERなどのユニット情報の報告時期が決定された。2008年のインベントリの報告時期は実務上の理由で2年後の2010年4月になっているが、電子データであるユニット情報は1年前倒しで2009年4月に提出。第一約束期間後の「調整期間」後のユニット情報提出期限も1年近く前倒しになり2015年7月になった。関室長の言及した「迅速な資格回復手続き」採択とともに実質的に評価できる。 条約12条に基づき先進国・途上国に義務付けられたNational Communications(NCs)の途上国用ガイドラインの改訂が行われた。2013年以降について議論する上でNCsにおける途上国の情報が基盤になること、そして途上国における緩和活動を正当に評価する必要があるという認識で交渉に臨んだ。交渉において先進国側は「緩和(削減措置)に関する内容充実」途上国側では「負担増への懸念」という対立があったが、ガイドライン4章に緩和プログラムへの言及を盛り込むなどかなり先進国側の意向が入った形で決着したことは評価できる。排出量のデータは2002年のみとなったが今後も継続審議することとなっている。一方、先進国のNCsについては第4次報告の提出期限が京都議定書3条2項の「明らかな前進」の報告時期と同じ2006年1月1日となった。 植林/再植林のみ認められたシンクCDMについては、「定義及び様式」のCOP9決定向けて率直な意見交換が実施された。定義について89年となっている基準年の議論などまだ収束の方向が見えない。また様式(modalities)においては、火災や伐採といった非永続性という森林特有の問題が議論された。EUはTemporary CER(T-CER)の採用を主張した。このT-CERは発行後5年後に失効し、当該森林のその時点でのCO2蓄積量に応じてT-CERが再発行されるものである。一方、カナダは森林に保険をかけるInsured-CERを提案している。 |
CDMプロジェクトの進め方はマラケシュ合意で決定したが、このルールをどのようにフォーマットに落していくかがCDM理事会の役割。具体的にはCDMプロジェクトの有効化/検証/認証の手続きや、その手続きを行う運営機関(OE;Operational
Entity)の信任手続きなどである。 OE信任手続きはすでに8月に公表され7社が申請を済ませており、その内5社が日本からの申請である。マラケシュ合意ではCOP8でOE信任を行う予定であったが、7月以降集中的な議論を行いようやくここまできたという印象である。OE信任についてはCOP9までCDM理事会による暫定信任となっており、CDMの早期開始を念頭において来年のできるだけ早い時期にCDM理事会でOE信任を行う予定である。 OEの専門技術分野は13分野(配布資料参照)。またOE信任は有効化/検証/認証のフェーズごとに審査。審査手順はISOの信任作業に習いオフィスでの審査も活用。またOEは実際の作業を行う支社についても信任を受けなければならないことに留意する必要がある。公表されている信任手続きのガイドラインの用語において、ISO認証手続きにおける用語との不一致を整理する作業を実施しているが、これはルール改正ではなく透明性と分かり易さを高める作業である。 小規模CDMに関しては「簡略された手続き」が公表されているほか、参考資料としてベースラインの例示が出ているが、詳細は今後Meth-panelで検討されパブコメなどの対象となる。 COP8で決定することになっていた「ベースラインとモニタリングのガイドライン」については、多岐にわたる分野をすべてトップダウンで決定することの技術的な困難さと、決定することで潜在的な可能性を否定してしまうという懸念から現時点でCDM理事会としてガイドラインを提示するのは適当ではなく、今後の提案の積み上げを通して必要に応じてガイドラインを提示していくのが合理的かつ現実的と判断したもの。 プロジェクト規模別で登録費用が決定された。登録費用は一般に言われているクレジット費用に対して実施者に著しく負担にならないように配慮されている。CDM登録簿は開発に向けて準備中であるが、2003年にならないと詳細は分からない。 日本政府は10月16日京都メカニズム活用連絡会において「JI/CDM事業承認手続指針」を公表し、すでにJI/CDMそれぞれ一件づつ申請されている。一方国別登録簿は経済省及び環境省で準備中である。また、ホスト国に対するキャパシティービルディングを民間事業者と協力して促進していきたい。
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COP8交渉の「行間」をどう読むべきか?-新たな動きの胎動?(PDF
548K) COP8報告 -京都ルール決定後の方向性について-(PDF 476K) |
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質疑応答(括弧内は回答者) |
Annex IとAnnex
IIの違い
COP/MOP1の開催方法
将来のルール作りにおける日本政府の基本方針は
京都議定書の発効時期
COP8における補完性の議論
再生可能エネルギーシステムや省エネ機器輸出によるクレジット獲得の可能性
途上国のNCs改善点
米国の動向と今後
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議定書未批准の途上国からCERを獲得できるのか、また途上国は排出量取引をするためにCERを保有できるのか
CDMにおける2国間協議の進捗状況
DOE(Designated OE)と事業者の紛争処理方法
OE信任プロセス
ベースラインにおける経済的追加性(additionality)に関する議論
OE候補によるwittinessに使用されたプロジェクトの取扱い
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CDM吸収源活動によるCERが「失効」した場合だれが補填するのか
国内森林管理における吸収量の割当方法
森林を伐採したときの算定方法などは
ヒマワリに活用した取り組みの吸収源活動としての取扱い
世界の森林面積減少への取り組み
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日本の京都メカニズムの使用割合は
CER/ERUの国による買い上げ制度については
国内排出量取引への見解
代替フロンにおける国内対策
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セミナー参考資料 |
・ | COP8/SB17参加報告書(GISPRI-PDF 648K) |
・ | CDM理事会報告書 (「小規模CDMの簡素化された方法及び手続き」GISPRI仮訳-PDF 217K ・ 原文-PDF 449K) |
・ | CDM理事会小規模CDMパネル答申「小規模CDMベースライン/モニタリング方法論」 (GISPRI仮訳-PDFファイル324K ・ 原文-PDF 64K) |
・ | ENB/COP8サマリー (GISPRI/IGES仮訳-PDF 414K ・ 原文) |
以上 (文責 高橋 浩之) |
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